福岡の弁護士 伊達法律事務所 伊達健太郎
Q&A
福岡県弁護士会所属 
Home   |   事務所概要・弁護士紹介   |   取扱分野   |   Q&A   |   修習生からの手紙   |   リンク   |   プライバシーポリシー    |   免責事項

   

保証契約の注意点〜平成17年4月1日施行民法改正について 

登録のある自動車の対抗要件 

マンション管理規約の変更の決議要件について 

マンション管理組合の総会が一日で終わらなかった場合について 

マンション管理組合の集会における動議の取扱い 

住宅専用マンションにおけるピアノ教室 

工場跡地の売買には注意を(土壌汚染対策法2月15日施行) 

営業秘密と情報管理 

リストラに伴うパートタイマーの解雇 

離婚と子どもの戸籍 

ゴルフ会員権の預託金返還請求 

小型船舶の登録制度 

取引先に倒産の懸念がある企業各位 

多重リースにおける所有権の所在について(R5.11.21修正)

私はリース会社Aにて債権管理を担当している者ですが、あるユーザーDが同一のプラント(動産)についてリース会社Bとの間でもリース契約を締結していることが判明しました。ユーザーDはサプライヤーCと共謀して、A社とB社に二重にリース契約をもちかけたのです。サプライヤーCは、既に事実上倒産しているためリース会社Bとの間で所有権の争いが起こっています。私どもがリース契約を締結したのが、平成16年7月20日、引渡が同月21日、B社のリース契約が同月25日であった場合、いずれのリース会社が所有権を取得することとなるのでしょうか。
1.まず前提として、本件リース契約はいわゆる二重リースですが、同一物件について二重にリース契約がなされているという理由だけでリース契約が無効となることはありません。但し、B社が詐欺取消(民法96条)をなしうることは後述します。

2.リース会社間の対抗関係(民法178条)
通常のリース契約の場合、リース会社Aは、サプライヤーCから物件を購入し、ユーザーDにリースするという形態を取っています。また、通常、物品の引渡しはサプライヤーCから、直接、ユーザーDへとなされます。その後、本件のような二重リースのケースでは、サプライヤーCとユーザーDが共謀の上、リース会社Aとのリース契約を秘して、同一の物件につき他のリース会社Bとの間でリース契約を締結することとなるものと考えられますが、その前提として、リース会社BとサプライヤーCとの間で物件の売買契約が締結されます。
したがって、物件の所有権についてのリース会社AとBとの関係は、サプライヤーCによる二重譲渡の場面ですから、対抗関係となっています。(民法178条参照)。

この点につき、民法178条は「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない」と定め、引渡の先後により優劣を決することとしています。 本件では、リース会社AがサプライヤーCから物件を購入した際、サプライヤーCからユーザーDへと物件が引き渡されていますが、これをもってリース会社AはサプライヤーCから現実に引渡を受けたものと考えられることから(代理占有。民法181条)、リース会社AがB社よりも先に引渡を受けたものと認められ、リース会社AはB社に物件の所有権を主張することができることとなります。


3.後続のリース会社による即時取得(民法192条)
ところで、リース会社BとしてはA社に対して、「サプライヤーC及びユーザーDの占有を信じて取引を行ったのであるから、民法192条に定める即時取得により、リース会社Bが所有権を取得した」と主張することが考えられます。ここで、即時取得を主張する際の要件は、
  @ 前主が当該動産を占有していたこと
  A 前主との取引行為
  B Aに基づき当該動産の占有を取得したこと
が必要となりますが、前述のとおり本件ではリース会社BがサプライヤーCから物件を購入した際には既にリース会社Aに対して、物件の占有が移転しているため、前主、すなわちサプライヤーCに占有がなく、要件@を欠くこととなります。
したがって、本件において、リース会社BはA社に対して、即時取得を主張することもできず、結局、リース会社Aが物件の所有権を対応できることとなります。

4.B社としては、既にA社に所有権があるものについてその所有権をB社に移転することができないことを知りながらリース契約を締結させられた以上、本件C及びDの行為は詐欺に該当するということができるため、民法96条により取り消すことができます。 また、C及びDの行為は、刑事上も詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性が高いことから、刑事告訴を行うことも考えられます。

(参 照)
第192条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

保証契約の注意点〜平成17年4月1日施行民法改正について

私は、ある中小企業の代表者をしている者です。当社では、これまで金融機関との取引の際、代表者として連帯保証しており、取引の度に毎回、代表者の方に保証をすることは面倒なので、将来発生する債権の全てについて保証をしておりました。
ところが、今回、民法の改正により、このような保証ができなくなると聞いたのですが、概略を教えて下さい。
このように、将来的に発生する債務について、額や期間を限定せずに保証人が一括して保証する制度を「包括根保証」と呼んでいます。
中小企業が金融機関から融資を受ける場合には、経営者本人が保証人になるケースがほとんどですし、運転資金の借り入れの場合、包括根保証契約を締結しておけば、借り入れのたびに毎回保証契約を結び直す必要はないため、手間が省けるというメリットもありました。
他方で、会社の債務が雪だるま式に債務が増えてしまったときに、経営者本人が過大な債務を負担することとなり、私財の売却などを余儀なくされるケースも少なくありませんでした。
そこで、かかる状況を打開するため、@極度額の定めのない根保証契約は無効とされ(改正民法465条の2第2項)、A保証期間が5年以内に制限され(特別の定めがなければ3年。同法465条の3)、B根保証契約を含む保証契約は書面(契約書)によらなければ無効とする(同法446条2項)等の改正がなされました(平成16年12月1日法律第147号。平成17年4月1日施行)。
したがって、今後は額も期限も定めのない包括根保証を結ぶことはできず、@限度額及びA5年内の期間を定めた保証契約を、B書面で締結する必要があります。

登録のある自動車の対抗要件

2003年4月ころ、中古車を購入したのですが、「自動車登録をするから1ヶ月程度はかかる」と言われ、登録が終わるまで車は中古車屋をしているBのところに置いたままにしておくことにしました。ところが、同年6月になっても車を引き渡さないので心配になり、Bに問い詰めると、Bは私の車をDという男に売ってしまったというのです。私はBからお金を取り戻すことも考えたのですが、Bには資力がなく、来月自己破産をするといっています。陸運局で確認したところ、自動車の登録は私のものになっていましたが、自動車自体はDが乗っています。何とかDから車の引渡を受けたいのですが、どうにかならないものでしょうか?
登録を受けた自動車について、二重に売買が行われた場合、他の買主に自分の所有権をに対抗できるかがまず問題となりますが、自動車は動産であるため民法178条に従い、引渡の先後により優劣関係を決するのが原則です。しかしながら、「登録を受けた自動車」については、道路運送車両法5条1項により、「登録」が所有権の対抗要件となります。
したがって、二重に売買が行われた場合には、先に登録をした者が他の買い主に対して自己の所有権を主張できます。
他方で、Dの立場からは、「自分はBの物だと思って車を買ったのだから、即時取得(民法192条)をした」との反論も考えられるところですが、自動車には登録制度があることから、車検証を確認せずに自動車を購入することには過失がありますので、車検証がBになっていないことにつき合理的な理由があることを過失なく信じるだけの事情がない限り、即時取得の主張が認められることはないでしょう。よって、この場合、登録をしている質問者がDに対して所有権を主張できる可能性が高いということができます。
動産であっても、登録の先後により対抗関係が決まるものには、車両、船舶、建設機械、農業用動産があるので、このような物の売買の際には、直近の登録名義を確認することを忘れないように心がけましょう。

(参考)
道路運送車両法
第5条 登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の規定は、自動車抵当法 (昭和26年法律第187号)第2条但書に規定する大型特殊自動車については、適用しない。

自動車抵当法
第2条 この法律で「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)による登録を受けた自動車をいう。但し、大型特殊自動車で建設機械抵当法(昭和29年法律第97号)第2条に規定する建設機械であるものを除く。

マンション管理規約の変更の決議要件について

今回、私の住んでいるマンションで規約の変更を行う予定なのですが、私の住んでいるマンションの管理規約では「区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数による集会の議決」が必要とされています。ところが、マンションの区分所有者は300件を超えるマンションで5分の4以上の賛成を得ることは、外部に住むオーナーさんもいることを考えると到底不可能です。このような規約は大変不便なので何とかしたいのですが、規約を変更しなければならないのでしょうか?
1 建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という)31条1項は、規約の変更の手続に関して次のとおり定めています。

 「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」

2 この点、旧法下においては、規約の変更等は、原則として区分所有者全員の書面による合意によって行うものとされていました(1983年改正前区分所有法24条1項)。
しかしながら、建物等を管理する際には、時代の趨勢に応じて規約を変更する必要があるにもかかわらず、全員の合意が必要であるとすれば、特に区分所有者の多い物件における規約の変更は極めて困難です。
そこで、改正に際して、法は上記のように「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議」により規約の変更を可能とし、区分所有者全員の同意を必要とする要件を緩和しました。

3 このような改正の経緯に鑑み、法31条1項に定める「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議」は、例えば規約の変更に全員の同意または5分の4以上の変更が必要である等として、決議の要件を厳格化することは許されないものと解されています。
他方で、法31条1項が定める要件を緩和することは、法律上認められている区分所有者が有する所有者としての権利を制限することとなるため、許されないと解されています。

4 以上より、法31条1項の定める決議要件は、厳格化することも緩和することもできない強行規定であって、規約の変更について区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数による集会の決議を必要とする規約は効力を有せず、規約の変更をせずとも法の規定に従って規約の改正を行うことが可能であると思料致します。

(参考) コンメンタールマンション区分所有法 稲本洋之助 鎌野邦樹 著 日本評論社

マンション管理組合の総会が一日で終わらなかった場合

マンション管理組合の総会(集会)において議論が紛糾した場合、一時議論を休止して約1週間後に再び再開することができるでしょうか。また、総会における委任状は1週間後に再開される総会においても有効でしょうか?
1 まず、集会の継続について区分所有法上に明文の規定はありません。
しかしながら、集会の継続について規約に定めがある場合には、私的自治の原則より規約の定めに従うこととなります。
なお、中高層共同住宅標準管理規約(単棟型)には集会の継続に関する規定はありません。
 

2 仮に規約の規定は欠いている場合、集会の継続は可能か否かが問題となります。この点、団体内部の意思決定についての手続という点で共通点を有する会社法には、次のような規定があります。

商法243条 総会ニ於テハ延期又ハ続行ノ決議ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第232 条ノ規定(招集手続)ヲ適用セズ

すなわち、株主総会の開会後、議事に入る前に会日を延期することを延期といい、議事に入った後予定されていた全ての審理を終了しないまま総会を中断し、後日、継続して審議を行うことを継続というところ、いずれも当日出席した株主の議決権の過半数をもって決議することができ、延期後の総会を延会、後日継続のために招集された総会を継続会というものとされています。
延会、継続会とも、当初の総会と同一性を持つものとされ、改めて招集手続きをとる必要はなく、議決権行使書、委任状の効力も継続しますが、決議の際には、延会の開催日、時間、場所を具体的に定めるか、議長に一任することが必要です。
延長または継続がどの程度の日数まで認められるかについては、招集通知の発送日との関係で2週間程度を一応のめやすとすべきであると考えられています(通説)。
なお、延会・継続会とも定められた要件に従うことが必要であり、要件を欠いた場合は、流会として、当初の招集手続からやり直さなければなりません。


3 商法上の株主総会も会議体であり、かつ、時間的な制約がある中で開催する必要がある以上、延長・継続は自由になしうるのが原則であるとも思われるにもかかわらず、商法が一定な要件を定めたのは、できる限り出席者を確保しようとする趣旨であると考えられます。
すなわち、総会の期日が伸びた場合には、当初の開催日であれば出席できなかったが別の日であれば出席できるという者も存在するため、できる限り改めて招集手続を行うことが望ましいことから、商法がかかる規定を設けているものと考えられます。
マンション管理組合においては、判例上、集会の出席者に対して、できる限り出席機会を確保しようとする傾向があり、上記商法よりも、より趣旨が徹底されています。
したがって、マンション管理組合において延会・継続会を認めれば、招集手続なく集会を行うことを認める結果とるため、仮に認めるとしても商法の規定類似の要件を整えた場合に限られるものと考えるべきでしょう。
また、継続会を開くことができる日数については、区分所有法上、招集通知は1週間前までに発送することとされているため(区分所有法35条1項)、第1回目の集会から1週間以内に開催する必要があり、次々回以降のさらなる継続会は許されないものというべきです。
なお、継続会と認められた場合には、前回の集会の際に提出された委任状は有効であると評価できます。
また、前回の集会に出席できなかった区分所有者が続行会には出席できる場合には、当該区分所有者は当然に出席して議決権を行使することが可能です。
これに対して、前回の集会に出席したが続行会には出席できない区分所有者については、規約をもって委任状若しくは議決権行使書の提出期限が「集会前まで」等と定められているような場合には、委任状等は前回の集会の開始時までに提出する必要がありますので、議決権を行使することはできません。
もっとも、かかる規定を欠く場合には、委任状若しくは議決権行使書による議決権行使は可能であるといえます。
 

4 本件においては、詳細な事情は明らかではありませんが、議長が継続を決めた際に、@出席者より継続の動議が提出され、議長がこれにつき採決を取った結果採用された、A議長より継続の提案がなされた際、出席者の拍手等により支持された等の事情があれば、類推適用される商法243条所定の要件を備えたものと評価できます。
また、集会後に説明書を全区分所有者に配布することは、出席者確保の観点からも必須であるものといえます。
但し、この説明書が新たな招集通知と評価される場合には、次回総会は新たな集会であるとされ、委任状は無効となってしまうため、注意を要します。
なお、前回の集会と続行会との期日間は、休憩中と同じ扱いであり、期日間に議事進行につながる行為を行ったとしても効力は生じません。
したがって、投票などはあくまで集会の場で行うべきであり、欠席者のみ書面投票とすることが適切であると考えます。

マンション管理組合の集会における、動議の取扱いについて教えて下さい。
1 マンション管理組合において、規約の変更や管理会社の変更などマンションの区分所有者に重大な影響を与える事項は法律もしくは管理規約によって集会の決議事項とされています。
かかる集会の際には、書面による投票や委任状による出席とする区分所有者が多いのが現状ですが、当日に出席者から新たな提案がなされた場合、どのように扱うことが適切なのか問題となるケースがあります。

2 区分所有法(以下「法」といいます)は招集通知及び決議事項の制限について次のように定めています。
(招集の通知)
第35条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。

(2項〜4項は省略)

5 第1項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第17条第1項 (共用部分の変更)、第31条第1項(規約の設定・変更・廃止)、第61条第5項(建物の大規模一部滅失の場合における復旧)、第62条第1項(建替え)、第68条第1項(団地規約を定めることの各棟の承認)又は第69条第7項(団地内の建物の建替え承認決議)に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

(決議事項の制限)
第37条 集会においては、第35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別の定めをすることを妨げない。

すなわち、集会においては招集通知に記載した事項についてのみしか決議することができず、35条5項に定める事項を除いては、招集通知には会議の目的たる事項(議題)を記載しなければならないこととされています(35条5項に定める事項については議案の要領まで記載する必要があります)。
これは、前述のように、多くの管理組合の集会においては、実際に集会に参加する区分所有者が多くはないため、突然、議題が変更・追加された場合には不意打ちとなり、不当であるためであると考えられます。
なお、議題・議案についてですが、例えば、管理組合の役員を選任する場合で考えれば、議題が「役員(○名)選任の件」、議案が「候補者A、B、C」というようになります(議題は必ずしも上記のとおりとなるとは限らず、候補者A、B、Z選任の件とする議案もあり得ますので、ご注意下さい)。したがって、当日新たになされた提案が、招集通知に記載がある事項の議案の提案であれば当該集会で提案し、決議に付することができますが、招集通知に記載のない事項であれば、議題の提案となり当該集会においては決議することができず、また、議題を変更するような提案についても当該集会において決議することはできないという結論になります。
もっとも、当該提案が議題の変更か、議案の提出か判断が微妙なケースもあり得ますので、専門家に相談の上、適切なアドバイスを得ることが肝要です。

住宅専用マンションにおけるピアノ教室

私の住むマンションは、ファミリータイプの住宅用マンションなのですが、最近、隣のAさんがボランティアとして定期的にピアノを教え始めました。このため、ピアノの音で落ち着いて生活することができません。なんとかやめさせることはできないのでしょうか。
1 ファミリータイプの住宅用マンションの場合、騒音を防止し住宅として平穏な生活を確保するため、管理規約に次のような規定を設けることがあります。

第○条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
第○条 専有部分の居住者は、当該専有部分の使用に当たり、次の行為をしてはならない。

(1) それぞれ規約に定められた用途以外の用に供すること
(2) 住居を事務所および楽器等の教室として使用すること
(3) 楽器等を早朝(午前8時以前)および夜間(午後8時以降)他の居住者に迷惑を及ぼす演奏をすること
(4) テレビ、ラジオ、ステレオ、各種楽器等の音量を著しくあげること

区分所有者は、原則として区分所有権に基づいて、自分の専用部分を自由に使用、収益あるいは処分する権利を有しているため、上記管理規約の規定は、専用部分の居住者の権利を一部制限するものになりますが、それぞれの区分所有者が、勝手な使用を行うと、騒音等が発生するなどして近隣者が快適に暮らすことができず、マンションの共同生活全般がおびやかされることにもなりかねません。
そのため、区分所有法は「建物の管理又は使用に関し」、「区分所有者の共同の利益に反する行為」(同法第6条第1項)は、その行為の程度により同法第57条から第60条までに定められた差止め請求などの措置を講ずることができることとしており、上記管理規約の規定は同法の趣旨に鑑みても適法であるということができます。

2 あなたの住んでいるマンションの管理規約にも同様の規定があるので、本件マンションにおいてピアノ教室を行っ てはならないことは規約および使用細則より明らかですが、本件においては、ボランティアとしてピアノを教えているため、「教室」に当たるか否かが問題となります。

3 この点、教室とは、一般に「(学校で)学習や授業をする室」をいいますが、単に1回子どもに楽器を教えた場合等まで「教室」と認定することは困難であることから、「教室」というためには、一定期間定期的かつ継続的に授業を行っていることが必要です。
本件においては、詳細は不明ですが、「定期的」に教えているということであれば「教室」として使用しているものと考えられます。
また、本件においては、ピアノをボランティアで教えており対価を得ていませんが、管理規約は金銭の授受にかかわらず住居以外の使用方法を禁じており、また、禁じられている事項は金銭の授受を前提としておらず、むしろ、騒音の発生の有無を問題としているため、ボランティアであるという事情は「教室」であるかどうかの判断には直接には関係ないものというべきでしょう。

4 そもそも、管理規約により専有部分を専ら住居をして使用することとし、また、楽器等の教室を行うことを禁じた趣旨は、

@マンションにおいては隣室と近接しており、居住者の行為が他の居住者に与える影響が大きいことから、騒音を防止し、住宅として平穏な生活を確保する必要があること。
A住居以外の使用方法により不特定多数の者がマンションを訪れる可能性があり、平穏な生活が乱されることを防止する必要があること。
の2点にあるものと考えられます。

とすれば、ピアノをボランティアで教える場合であっても騒音が生じ、また、不特定多数の者の出入りが行われる可能性がある以上、金銭の授受にかかわらず、規約および使用細則に違反すると言わざるをえません。
もっとも、住居専用とする管理規約の趣旨からすれば、
@ピアノを平日の日中に教えており、かつ、ピアノなどの音が他の居住者の平穏な生活を脅かす程度に至っておらず、
Aまた、居住者がピアノを教える相手が多数人でなく、かつ、長期にわたって特定人である場合には、ボランティアも居住者の生活の一部であって規約の趣旨に反しないとして、許される場合もありうるため、騒音の程度等より具体的な事情を下に判断する必要があるようです。
具体的には、
@マンションの立地条件(他の騒音の有無)
A構造
B目的外行為の態様
C目的外行為をなすことによって生じる住環境への影響
D目的外行為を禁じることによって生じる特定居住者の不利益の程度
E規約制定の経緯
などを総合して考慮する必要があります。

5 マンションは、その性質上、お互いが譲り合って生活しなければ他の居住者に大きな迷惑をかけることになりかねません。その点で非常識な楽器の使い方や規約に反する楽器教室は許されないものと言わざるを得ません。
他方で、一般に考えられる受忍限度を越えない程度の音であれば、これもまたマンションの構造上、我慢すべき場面もあり得ます。

お互いが心にゆとりをもって生活し、快適で豊かなマンションライフを楽しみましょう。

工場跡地の売買について(土壌汚染対策法2月15日施行)
今度某都市の市街地に、商業施設を作る計画をしています。ちょうど土地所有者が民事再生を申し立てたばかりで、遊休地なので安く処分しようとしていて好条件なのですが、買収にあたり注意すべきことはないでしょうか。
当該土地が商業施設として適当か否かは、専門外なのでわかりませんが気になるのは、その場所は戦前から工業が盛んだったところですから、土地について土壌汚染対策法をにらんだ調査をする必要があると思います。

1 土壌汚染対策法が平成14年5月29日に公布され、平成15年2月15日に施行されました
  
2 同法は、土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがある土地について、都道府県知事の権限として土地所有者等に汚染の除去等の土地を命ずることを可能にした法律ですが、汚染原因者にも除去等の措置を命ずることができるようになっています。

3 従って土壌汚染した土地を購入した場合は、買主に責任がかかってくることになります。

4 汚染土壌の除去と一言でいいますが、汚染原因となった化学物質によっては、現場での土壌改良工事ができないものもあり、その場合汚染土壌を他へ搬出して汚染されてない土壌と入れ換えなければならない場合もあります。そしてその汚染土壌を受け入れてくれる者を見つけることが困難なのはいうまでもありません。 東京あたりでは土壌改良工事に土地の価額を越える費用を要する場合さえあるということです。

5 汚染した土地であるか否かは、都道府県知事が汚染区域を指定区域として指定・公示するとともに、指定区域の台帳を調整し、閲覧に供することになっておりますので、最低限これを調べる必要はあるでしょう。

6 ところが売買契約により土地を取得するという場合は、これでは全く不十分です。土壌汚染対策法は施行されたばかりで、そのような台帳の記載はまだ完備していないでしょう。
従って、まずは土地の履歴を調べて、工場跡地であるか否か、化学物質、油性物質の貯蔵等に使われたことがないか判断する必要があるでしょう。でも土壌汚染は化学物質の性質上、何十年前の工場跡地であっても汚染が続いている可能性があります。この場合売主や近隣の者に聞いて回った位ではわからない場合もあるでしょう。もっと問題なのは、汚染物質は地下水を経由して隣地から移って来る場合さえあるということです。売買の直前に土壌改良をしても、しばらくするとまた隣地の汚染が移って来ることがないとはいえません。この場合は隣地との間の地中にファイアウォールを築く必要さえあるかも知れません。
またたとえば砒素等の物質は天然のものもあるようで、天然の物質は本法の適用外のようですが、天然の砒素か人造の砒素か区別はつくのでしょうか。
問題は天然の砒素との区別がつくか否かではなく、仮にわずかでも砒素が出たということによる風評が怖いのです。また少なくとも売買交渉の際にそのことを理由にして価格を値切られ、また損害賠償のトラブルを生ずることが怖いのです。

7 買主としては、契約交渉にあたって、売主の側に信用できる土壌調査会社に調査をさせその調査報告書を交渉に先立って提出させてはどうでしょうか。そんなにうるさいこというなら売らないという場合、なにか裏にあると見た方がよいのかも知れません。
あるいは売主と買主が費用を分担して、ボーリング等の調査をするということもあって良いと思います。買った後に調査するというのでは遅いと思います。土壌改良費用がいくらかかるかをめぐって紛争となるからです。

8 売買契約に当たって調査を経たとしても、念のため契約書中には、瑕疵担保条項(民法570条)を入れておく必要があります。どのような瑕疵担保責任を売主に負わせるかは、まさに交渉で決めればよいのですが、詳細は必ず顧問弁護士のチェックを受けましょう。

営業秘密と情報管理について
1 ノウハウや顧客名簿等の情報は企業にとってかけがえのない財産です。
これらの情報は、有体物とは異なり人の記憶を介在することから、一度流出すれば「取り戻す」ことはまず不可能です。しかも、何人でも同時に活用することが可能であり、また、遠隔地であっても瞬時に到達することができる性質から、社外へ流出した際の損害は甚大なものとなる恐れがあります。
そのため、多くの企業はこれらの情報の外部への流出を防止しようと取り組んでいますが、これらの取り組みが法的にも十分な成果を挙げうるか否かは検証が必要です。


2 企業におけるこれらの情報を保護する法制として「不正競争防止法」が挙げられます。
 この不正競争防止法によって、「営業秘密」として保護される要件は以下の通りです(不正競争防止法2条4項)。
 @秘密として管理されている(秘密管理)
 A生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって(有用性)
 B公然と知られていないこと(非公然性)
  
まず、
@秘密管理について
単に「社外秘」等の朱印を書類に押していたからといって十分な秘密管理ができていたとはいえません。すなわち、秘密管理がなされているというためには、例えば、当該情報が秘密であることを明らかにした上で、当 該情報を金庫等一般の従業員が触れることができない状態として、接触できる者を一定の役職または業務に携わる者に限定し、さらに、当該情報に接触できる者との間で秘密保持契約を締結する等の措置が必要なのです(一例であって業種によっては独自の工夫が必要でしょう)。
秘密保持契約については、入社時及び退職時において従業員との間で締結することが一般的ですが、人材の流動化の進行と共に情報の流出の危険性も増大していることから、プロジェクト毎に秘密保持契約を締結する等徹底した秘密管理が求められています。
なお、退職時の秘密保持契約には、「私は同業他社には再就職しません」等競業避止義務まで負わせるものもありますが、年数・地域的な限定、相当な対価等の措置のない競業避止義務を負わせる契約の効力は否定される可能性が高いため、注意が必要です。

A有用性について
情報であっても事業活動に有用でないものは不正競争防止法として保護の必要性に乏しいため保護されません(例えば、プライバシーに関する情報については民法などによるべきであり「営業秘密」としては保護されません)。
ここに、有用性に該当する情報としては、例えば製造方法・実験の結果(技術上の情報)や顧客名簿・フランチャイズチェーン等の運営方法(営業上の情報)等が挙げられます。

B非公然性
誰でも知りうる公知の事実について「秘密」として保護することは二律背反することですから、非公然性が要件として求められることは当然です。
したがって、他社に対して、ノウハウ等の開示を行う際には、他社との間においても秘密保持契約を締結するという当然の措置が求められることとなります。


3 かかる「営業秘密」が「不正行為」によって侵害された場合には、企業は差止請求及び損害賠償請求をすることができます(不正競争防止法3条・4条)。

不正競争防止法が「不正競争」とする行為は次のとおりです(不正競争防止法2条1項)。
@窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)
Aその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
Bその取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為
C営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の競業その他の不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為
Dその営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為、又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
Eその取得した後にその営業秘密について不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為これらの「不正行為」に該当するためには、行為者が「知って」いることが必要であることから、行為者に対して営業秘密を侵害することを知らしめるため秘密保持契約を締結することや、行為者に対して速やかに警告書を送達することで行為者に侵害行為を行っていることを知らせる必要があるということなります。


4 現代のグローバルな競争社会においては、単なる価格競争ではなく商品やサービスに高度な付加価値を付けることで利益を生むに至っており、付加価値創設のため情報の有用性はますます高まる一方で、人材の流動化やハッカーによる情報窃盗など情報の流失の危険性も高まる一方です。
かかる情勢の中で、企業が情報を保護するためには、日頃から情報管理を徹底する必要があり、その情報管理においては、ファイヤーウオールなどハード面での管理だけでなく、秘密保持契約などソフト面での管理まで行うことが重要なのです。

リストラに伴うパートタイマーの解雇についておしえてください。
1 パートタイマーという言葉そのものについて法律上定義はありませんが、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年六月十八日法律第七十六号。以下「同法」という)には、次のような定義があります。
 「この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者…の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう」(同法第2条)。
同法はパートタイマーの労働条件の改善を意図して制定された法律ですので、ここにいう短時間労働者は法律上のパートタイマーのことを指しているものと理解して良いでしょう。
したがって、法律上のパートタイマーとは、給与体系(時間給制であるか、月給制であるか)、パートタイマーという名称の有無、期間の定めの有無にかかわらず、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいうものとされることとなります。

なお、事実としてパートタイマーという名称であるにもかかわらず、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間と同等の労働者については、そもそも通常の労働者(一般的には"正社員"と理解すると分かりやすいところです)と同等に扱うべきであり、パートタイマー労働者としての問題は発生しないはずであるという結論になります。

2 パートタイマーに対しては、労働契約の際の労働条件の明示及び労働条件に関する事項その他の労働条件に関する事項を明らかにした文書(雇入通知書)の交付、就業規則の整備等が必要とされていますが(事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針(平成5年12月1日 労働省告示第118号)。以下「指針」という)、ここでは、リストラの一貫としてパートタイマーを解雇するという状況に際しての法律問題を検討します。

3 まず、パートタイマーは多くの場合、一定期間の雇い入れである旨の定めがあるケースが多いものと思われます。
この場合、当該一定期間経過後に再び雇い入れを行わないことは解雇ではなく、通常の退職ということになります(雇止め)。
しかしながら、期間の定めがある場合でも、何度も更新を繰り返している場合には、パートタイマーであっても長期雇用に対する期待が生じることから、期間の満了時であっても雇止めをすることはできず、通常の解雇に準じた取扱を受けることとなります(但し、更新の際に最後の更新である旨の明文の特約があり、お互いに納得しているような場合にはこの限りではありません)。
他方で、期間の定めがある場合においても期間の最中に解雇する場合には、通常の解雇に準じた取扱をうけることとなります。
したがって、これらの場合には、パートタイマーといえども労働基準法20条に定める解雇予告(指針第一、一、(六))及び解雇の正当理由の存在がない限り解雇されないこととなるのです。

もっとも、パートタイマーは補充的な労働者であり、企業の仕事量に連動して採用されているのでありますから、正社員の解雇理由とでは当然違いが生じることとなります。
そこで、リストラに伴うパートタイマーの整理解雇が正当理由になるか否かを検討すると、仕事の減少により企業にとって正社員のみで業務を行っても支障をきたさなくなったような場合や当該部門そのものの閉鎖の場合には、前述のようにパートタイマーは企業の業務活動の量に連動して採用される者ですから、他の経営努力を講じた後でかかるパートタイマーから解雇することは正当事由になるように考えられます(雇止めでない場合には、期間の満了まで待てない、すなわち、雇止めではなく当該時期に解雇しなければならない合理的な理由も必要であると考えられます)。

しかしながら、整理解雇にかこつけて一部パートタイマーを狙い撃ちで解雇することは、許されるものではなく、事業主が解雇を考える際には、対象者を解雇するに相当な理由を説明できるようにしておく必要があるでしょう。逆に、パートタイマーから見れば、勤務態度も悪くなく経験も豊富である場合等に当該部門で1人だけ解雇になるような場合には解雇の有効性に疑問があることも考えられるところです。

4 さらに、パートタイマーの解雇が有効をされた場合にも、期間が満了していない場合には期間が満了するまでの賃金を支払う必要があるのか否かが問題となります。

この点、当初定めた労働契約において、いつでも退職・解雇することができる旨の定めが期間満了までの賃金を支払う必要はありません。

しかしながら、かかる合意がない場合には、民法628条により雇用期間中に一方の過失により終了した場合として、賃金残額分の損害賠償義務を負うことがあり得ます。

もっとも、この民法上の雇用期間は企業だけではなくパートタイマーをも拘束することとなりますから、パートタイマーが退職する場合にも正当な理由がなければ損害賠償義務を負うこととなってしまいます。
そのため、パートタイマーがいつでも自己の都合により退職することができる慣行がある職場においては、民法上の雇用期間の合意はなく、いつでも退職・解雇できるのであって、パートタイマーに対する賃金残額支払義務はないものと考えられます。

離婚と子どもの戸籍 
私は、先日、長年連れ添った夫と離婚したのですが、苦労して育てた子どもの籍が夫の戸籍に残ったままになることが納得できません。子どもは既に成人しているのですが、結婚はしておりません。子どもの戸籍を私の戸籍に移すことはできないのでしょうか?
夫が戸籍筆頭者である場合、離婚が成立した際には、妻が夫の戸籍から抜け、元の戸籍(妻の両親の戸籍)に戻るか、または新しい戸籍に移ることになります。
妻が元の戸籍に戻る場合には旧姓に戻りますが、長年にわたり夫の姓を名乗り旧姓では生活しにくいような場合には、離婚後3か月内に市役所等に届け出ることにより、離婚後も婚姻中の姓を名乗り続けることが可能です(民法767条2項、戸籍法77条の2)。

ところが、2人の間に子どもがいる場合、妻が望んだとしても当然には夫の戸籍から移動することにはありません。かかる場合には、家庭裁判所の許可を得た上で、市役所等に「入籍届」を提出することで、妻の戸籍へ子どもの籍を移すことができます(戸籍法98条、民法791条)。
なお、子どもが15歳未満の場合には法定代理人により入籍を届け出ることができますが、15歳以上の場合には本人が届け出る必要があります(民法791条3項)。
また、妻が旧姓を名乗っている場合には、この氏の変更の手続も必要となります。

ゴルフ会員権の預託金返還請求
私のゴルフ会員権は、ゴルフ場がオープンしてから10年経過したので、退会して2000万円の預託金を返還して貰おうと思うのですが返して貰えますか?
全額返るのはあきらめた方がよさそうです。

1 取り返す方法は3つあります。
  1)  ゴルフ場と交渉して和解すること。
  2)  訴訟して強制執行をすること。
  3)  会員権を安く売却して、譲渡損をその他の所得と損益通算すること。

2 金額的にはどれが有効か、一慨には言えません。ゴルフ場の経営内容によると思います。3)の安く売却して一部を回収するのが一番経済的に有利な回収となる場合もあります。

3 ゴルフ場との和解は、裁判外でも一旦裁判を提起後でも、また判決後でもできる場合が多いと思います。
でも、ゴルフ場の側が提示して来る条件は、会員にとって非常識と思われるようなものです。多いのは一枚の会員権を3枚ないし5枚に分割して会員はその全部または一部を他に転売することを認め、その代わり分割された預託金の返還請求期限をさらに10年間延長するというものです。中には分割した一部については現金で払い戻すとか、責任をもって会員権業者を紹介するというのもあります。中には預託金の5分の1で和解できるなら現金で償還するという会社もあります。

4 裁判を起こして、預託金全額の支払を認める判決を得て強制執行をすることは法的には可能です。ゴルフ場側は理事会での預託金の償還期限延長決議があったとして抵抗はしてきますが、最高裁判所の昭和61年9月11日第1小法廷の判例があるのでたいていは会員側に軍配が上がります。
判決をとることはそう難しくありませんが、強制執行は困難でしょう。裁判所の執行官と一緒にゴルフ場に乗り込んでみますと、現金は隠されていて見つかりません(これは強制執行免脱罪という立派な犯罪で2年以下の懲役または50万円以下の罰金刑が課せられるおそれのある行為です)。また他の債権者が既に押さえた後だったりします。現金以外の什器備品はほとんど金にならないか、既に担保に差し入れられていて強制執行できないことが多いようです。
これ以外の強制執行の方法について、アイディアがないことはないのですが、ここでの公表は差し控えます。現在受任している事件の解決に差し支えますので悪しからず。

5 集団的な取立方法として、破産または民事再生手続による解決があります。
理屈の上では会員の方から申し立てることもできますが、ほとんど全てはゴルフ場側から裁判所に申し立てられます。それにしても民事再生手続は地方に所在のゴルフ場でも東京地方裁判所に係属することが多いのはどうしてでしょうか。ゴルフ場所在地の会員の意向などどうでもよい、ゴルフ場に融資をした金融機関や大株主の意向の方が大切だというのでしょうか。このHPを通して東京地裁に抗議をしたいと思います。
破産の配当率は1パーセントなんてのもあってあまり期待できませんね。民事再生手続というのは比較的多いと思いますが、現金の回収と言う点ではやはり破産と同様多くを望めません。ただし民事再生の弁済計画案の多くは退会しないでプレーする会員のゴルフ場利用権については認めていますので、会員権を投機目的ではなくプレー目的で買った人には良い手続かも知れません(破産の場合は、以後プレー権は保障されません)。裁判所から送られてきた再生計画案に賛成すべきか否かという相談をよく受けますが、長いものには巻かれよということか反対しても少数派になるということが多いようです。勿論おかしな条件と思われたら反対したり、また債権者集会に委任状を出さずに欠席すれば反対の意思表示をしたことにはなりますのでそうする権利はあります。仮に反対した再生計画案について賛成多数(債権者の過半数が委任状を含めて出席し、やはり委任状を含めて債権額の過半数の賛成)として可決されたとしても、その条件は反対者にも公平に適用されますので不利益はありません。ただし反対の結果破産となることは覚悟して下さい。

6 会員権の転売による回収は一番簡単な方法です。ただし会員権の相場が10年前に比べて、それこそいくらで売れるか、みなさんご存じですね。預託金の返還が危惧されるゴルフ場の会員権は相当に安くなっているはずです。 また、多くのゴルフ場は売れ残りの会員権がある内は譲渡の名義書き換えを認めないという契約になっているようです。ただそのようなゴルフ場でも会員の親族とか関係会社また特別な理由(実際はなんでも認めているようです)があれば第三者への名義書き換えも認めることが多いようです。応じないと訴訟を誘発するからです。

7 ゴルフ会員権を10年保有した後で売却をしますと、その譲渡益(値上がりしたとき)には26パーセントの譲渡所得税がかかります。会員権を購入した時から値下がりしていれば、その差額を譲渡損としてたとえば給与所得から差し引けば税金が安くなります。この効果は意外に大きくて、たとえば2000万円で買った会員権を200万円で売ったとした場合、1800万円(銀行融資で買った場合はその利息も合わせて)を給与所得から差し引いて所得税の申告ができます。1年で差し引くことができなかったら翌年以降5年以内に所得から控除してよいのです。1800万円の所得がある人はそうとう所得税を払っているはずですが、それを払わなくてよいのですからこれは経済的にみて立派な回収方法といってもよいと思います。
問題が一つあるのですが、それは預託金の償還期限が来ているゴルフ場でも名義書き換えを禁止していて流通価額がない会員権については、その売買価格について適正であることを税務署に対して証明しなければ損金として扱われないということです。友人のS公認会計士によると同じ会員権につき2枚以上の売買事例を証明できれば税務署はその価額を参考にするとのことですが、どうやってその売買事例は見つかるのでしょうか。なおこれは脱税となるわけではなく税務署も認める適法な節税行為です。

8 実はこの会員権譲渡による回収で極めて有効な場合があります。それは会員権を自分と関係のある会社また会社の場合は関係する個人に売って、プレーの名義人は従前と同じ人を指定するという方法です。従来どおりのプレーをしながら節税を同時に行うことができます。将来会員権が値上がりすることがあれば(ありますかね)、そのときあらためて市場にに売りに出せばよいのです。
詳しくはかかりつけの税理士さんに相談して下さい。

9 返還請求のタイミングですが、和解するにしても訴訟するにしても、早い方が条件はよいのは常識です。時間が経過すればするほど預託金の返還請求者は増えますので破産あるいは民事再生手続となる確率は高くなります。

10 返還請求の訴訟手続を弁護士に依頼したばあいどの位かかるかということですが、これは各弁護士との自由契約です。本年から弁護士会としては報酬基準みたいなものは独占禁止法の観点から排除することになっております。そうは言っても皆さんはお困りでしょう。当事務所では、返還を求めるゴルフ場また当事務所と貴殿の関係(顧問契約があれば有利です)によって着手金と成功報酬を決めさせていただいております。極めて大雑把に言って回収見込み額の10パーセント程度が着手金と成功報酬の合計額と見てよいと思います。それに裁判所実費を預からせていただきます。着手金と成功報酬の割合はケースごとに話し合いで決めます。民事再生手続への参加手続は5万円程度です。なお回収可能性の低いゴルフ場、当事務所と関係のあるゴルフ場については取り扱えない場合もあります。                                  (伊達 健太郎)

小型船舶の登録制度(R5.11.21修正)
ヨット・モーターボートの登録制度ができたと聞きましたが、ほんとうですか?
 1 いつまでに登録しなければならない?
 2 登録手続の方法は?
 3 登録後にすることは?
 4 どのような船舶が「小型船舶」になるのでしょうか?
 5 登録の効力は?
 6 登録に対抗力がありますか?
 7 質権の設定はできない?
 8 強制執行、競売についてまで規定があるんですか?
 9 破産や民事再生法の申立の際に注意することは?
 10 小型船舶にはどこまで日本の法律が及ぶのでしょうか?
平成14年4月1日施行の「小型船舶の登録に関する法律」と関係省令で規定されております。
昔から海は誰からもうるさいことを言われずに、自由に航行できるのが原則でした。特に恐妻家である私にとっては、ほとんど唯一のくつろぎの場でした。
もともと「法」は、人と人または人と国の関係を規律するルールですから、海の上では誰にも干渉されることなくセーリングしたり、釣りをしたりする人には無縁のものでした。なるほど公海上でも2隻の船が衝突するのを避けるといったルールは、大昔から国際条約や国内法に規定がありましたが、あとは自己責任で自由に大海原を行き来できたのです。

ヨット操縦のための免許とか、6年毎に船舶検査を受けなければならないとか、あげくのはてに飲酒して操船してはならない、などという法律が立て続けに制定され、世知辛い海の上になったものだという感がしておりました。 そこに降って湧いたのが、今回の登録制度です。
(詳細→https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413AC0000000102_20220617_504AC0000000068 )

ともかく法律ですから国会で議員さんも賛成したのでしょう。どなたも反対したという話は聞きません。
小型船舶検査に関する法律ができたときには、船舶の利用者の安全のためということで納得しました。
今回の「登録」の制度は何が目的でしょうか。税金を課する台帳として使用するのでしょうか。というのは冗談で、小型船舶の取引の安全を守るためや、不法保留、不法投棄の取締りのためにも活用されることになります

1 いつまでに登録しなければならないのでしょうか?
小型船舶について、平成14年4月1日以降に船舶検査を受ける船舶はその検査の日までに、そうでない船舶も平成17年4月1日までに登録をしなければなりません。

2 登録手続はどうするのですか?
国土交通大臣宛てですが、日本小型船舶検査機構(JCI)の各支部で申請して下さい。磁気ディスクに記録されます。しっかり手数料をとられます。 登録原簿については、誰でも同機構で登録事項証明書の発行の請求ができます。登録事項証明書交付の手数料は一通1350円です。

3 登録後にすることはありますか?
船舶番号を割り当てられますから船舶の所定の位置に船舶番号を表示しなければなりません。なお小型船舶は平成14年4月以降の製造または輸入の段階で既に船体識別番号が船体に打刻されております(それ以前の船はJCIにお尋ねください)。登録はこの番号で船舶を特定して行うことになります。 小型船舶も国際航海に従事する場合、たとえば釜山レースに参加するには、この登録の他に、本船並に地方運輸局等から船舶国籍証書の交付を受けて船内に備え置かなければなりません。

4 どのような船舶が「小型船舶」になるのでしょうか?
1) 総トン数で20トン未満、および長さが24m未満の船です。総トンというのは船室等の容積をもとに算出する計測法で、重量トンとは違います。重量が3トン位のヨットでも総トン数が10トン近くなる船もあり得ます。FRPやカーボン製の軽い船がこれに当たります。20総トンというのは相当大きな船舶です。 真冬でも北洋まで出かけることのできる漁船が、事故は多いのですがリミットの19トンです。 20総トンを越える船舶を船乗りは「本船」と呼んでおりますが、従来から船舶登録が義務づけられておりました。
2) 水上バイクも登録が必要です。エンジンがついている船は、小型船舶検査を受ける必要がない船でも登録が必要です。
3) エンジンがないヨット、ろかいで動く船は不要です。
4) 漁船は除外され漁船法による登録制度があります。
5) 外国船籍の船舶は不要ですが、日本の各港間を航行する場合は登録が必要となります。


5 登録の効力はなんですか?(一般的効力)
小型船舶は、「小型船舶登録原簿」に登録を受けなければ、航行してはなりません。 違反には6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。注意していただきたいのは、海上保安官の臨検で違反が見つかりますと、全件検察官に送致されてしまうことです。

6 登録に対抗力がありますか?
小型船舶の登録は民法177 条の対抗要件になります。
「所有権の得喪は、登録を受けなければ第三者に対抗することができない」(第4条)とありますから、登録に物権変動の対抗力を持たせたものです。従来、小型船舶は動産扱いで占有の移転が対抗要件でした。
対抗力というのは小型船舶所有者がAさんとBさんに二重に譲渡したような場合、先に登録を受けた人が所有権の主張ができるのです。先に契約をしたとか、引渡しを先に受けたということでは、所有権の主張はできません。不動産では登記によることになっています。
小型船舶を譲渡する者は、所定事項を記載した譲渡証明書を譲受人に交付しなければなりません。譲渡証明は一通に限り、また以前譲渡を受けたときにもらった譲渡証明書を有するときは、合わせてこれも譲受人に交付して、譲受人は移転登録の申請書に添付して提出しなければなりません。随分親切な規定ですね。口頭の売買契約ではダメだということです。
小型船舶の取引で所有権の移転をしたときには15日以内に移転登録の申請をしなければなりません。怠ると30万円以下の罰金です。小型船舶の登録があることで、限りなくその登録を信用してよいということでしょうか。ただし、偽造した譲渡証明書で登録したような場合は、登録を信用した買主は保護されません。なお不動産の取引では登記をしなくても罰則はありません。
なお「登録を受けた小型船舶」なので、未登録の船舶は未登録の自動車などと同様に通常の動産扱いで占有の移転と譲渡証明書の交付が対抗要件になるものと思われます。
新所有者には15日以内の登録義務があります。30万円以下の罰金です。また漁船は本法による登録ではなく知事の漁船登録を受ける必要があります。やはり罰則があります。漁船法では登録の対抗力の規定はありません。その所有権移転の対抗要件は占有でしょうか。遊漁船で漁船と同じ形の船はいっぱいありますので困りますね。


7 質権の設定はできない?
質権の設定はできません。第26条。もちろん罰則はありませんが登録制度がありませんので、第三者に対して質権があることを主張できません。
おかしな話ですね。質権というのは私法関係です。船舶検査の取締の便宜なんかを考えているのでしょうか。移転登録をして譲渡担保により同じ目的を達成することはできるでしょうか。この場合船舶検査を受けるのは譲渡担保権者になるはずです。 自動車には抵当権の登録の制度がありますが、小型船舶では抵当権の登録の制度が現在ありません。法律上抵当権の設定ができないという規定はありませんからそのうち整備されるのでしょうか。小型船舶でも抵当権設定の必要は充分にあります。既に本船にはあります(船舶抵当権)。


8 強制執行、競売についてまで規定があるんですか?
地方裁判所が執行裁判所または保全執行裁判所として管轄するとの規定があります。

9 破産や民事再生法の申立の際に注意することは?
忘れずに登録原簿を閲覧して、登録事項証明書の交付を受けて申立裁判所に提出しなければなりません。

10 小型船舶にはどこまで、日本の法律が及ぶのでしょうか?
日本船籍の船舶については外国の領海の外で国内法が適用されます。公海上でも適用されます。小型船舶取引については国際航海に従事するときは、日本の船籍登録をしなければなりませんので、その船籍登録に基づいて取引を行うことになります。
ところで、この法律には、「国土交通大臣又はその職員は、船舶所有者の事業場もしくは船舶の所在場所、船舶に立ち入り、船舶または帳簿書類を検査し、関係者に質問ができる」という規定があります(第28条第1項)。
捜索令状なしに立ち入り等ができるということです。理由は「この立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」(第28条項)から認められることになっています。
憲法上は令状なしに船舶に立ち入り帳簿書類を検査することはできないはずです。これはたとえば、人命にかかわる船舶の安全検査等のため、迅速に検査をする必要があるからということでしょうか。
検査を拒み、妨げ、質問に答えず、虚偽の陳述をしたものは30万円以下の罰金です。
それにしても犯罪捜査のために立ち入るのではないと規定するだけで、令状なしに立ち入ることができるというのは少し乱暴な気がします。

(伊達 健太郎)

倒産の懸念のある建設工事発注者との工事請負契約
工事発注者もしくはゼネコンに倒産の懸念がある場合でも、完成予定の物件に相当の価値が望める場合、受注してよい場合があります。
 
工事物件完成後の商事留置権や、建設工事着工前に工事予算を登記する工事先取特権の活用を考えますが、いずれも完成後に土地所有者や抵当権者(金融業者)との話をつける必要があります。
 
元請けをするゼネコンに信用不安がある場合でも、発注者に資力があれば、工事着工前の発注者との契約で下請けを引き受けてよい場合があります。

取引先に倒産の懸念がある企業各位
取引契約において、

・所有権保留
・契約の解除
・期限の利益喪失
・相殺に関する取り決め
 
これらがあれば取引先が倒産しても代金を回収できる場合があります。 一定の要件のもと先取特権として優先回収できる場合がありますが、取引関係書類の整備が必要です。抵当権、債権譲渡の登記や登録があればより強力な回収ができます。取引関係書類の整備をおすすめします。


E-mail・ 電話・FAX等による法律相談は受け付けておりません。

又、お問い合わせは日本語のみ対応しておりますのでご了承下さい。 


Home  |  事務所概要・弁護士紹介  |  取扱分野  |  Q&A  |  修習生からの手紙  |  リンク  |  プライバシーポリシー   |  免責事項


伊達法律事務所
〒810-0041 福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル10F
TEL:092(714)2000(代)  FAX:092(714)0540  


Copyright(C)  2011 date low office . All Rights Reserved.